「1970年型フォード・トリノ・コブラ」をレベル製プラモで玩味する!【モデルカーズ】


1972年当時グラントリノの日本国内新車価格は440万円。マスタングよりも80万円ほど高く、現在の貨幣価値に換算すると1200万円ほどになる。429cu-inV8コブラジェットのオプション価格は分からないが、相当に高価だったはずで、同時期に正規輸入されたマスタングMach1のコブラジェットエンジン搭載車はわずか6台だった。そのことを考えれば、このエンジンを搭載したグラントリノの正規ディーラー車の数は、どう考えてもマスタングよりも少なかったはずだ。そんな希少車がこんなにも素晴らしい状態で現在まで残っていたこと自体がまさに奇跡のように感じられる。


AMERICAN MUSCLE 1/18 1970 フォード トリノ コブラ レッド AMM1234

この演出からは古き良きアメリカ文化を作り上げたものの姿と彼らの時代の終わり、そしてアメリカの良き伝統を継ぐのは人種を問わず、先人たちに敬意を払い、アメリカの歴史と文化を継承しようとする意志を持つ者に限られる、とする映画製作陣からの観客に対するメッセージなのだろう。

面白いのは、映画の中で主役であるウォルトがグラントリノのステアリングを握るシーンがまったくないことだ。というよりも劇中での走行シーンは2回だけ。ギャングのもとに丸腰でカチコミをかけたウォルトを追ってタオとスーが借用したのと、ラストシーンでタオが湖畔をドライブするシーンのみで、劇中でウォルトは1967~1972年にかけて生産された5代目フォードF-100ピックトラック以外に運転はしない(これはこれでアメリカを象徴するクルマではあるが)。彼とグラントリノとの関わりと言えば、ガレージから出してきれいに洗車し、自宅のポーチから愛車の姿を眺めながらビールを飲むだけなのだ。

人目を引く車がほしい人がいたら、この全長17フィート6インチ(約6.7m )のフォード・トリノ"キングコブラ"が希望を叶えてくれるはずだ。

オーナーは「不人気車ゆえに価値などありません」と謙遜していたが、希少なコブラジェットの心臓を持つ正規輸入の1972年型グラントリノであることに加えて、クリント・イーストウッド監督・主演の名作に登場する劇用車と同じ仕様であることを考えれば、その価値はまさしくプライスレスだ。映画の主人公・ウォルトにも負けないオーナーの情熱により、おそらくは今後もミントコンディションの状態を保ち続けるに違いない。

すなわち、1972年型グラントリノはアメリカの自動車産業最後の輝き、古き良き時代の象徴なのだ。監督のクリント・イーストウッドなのか、脚本家のニック・シェンクなのかはわからないが、こうしたことを考慮して車種選びを行ったのだろう。ハリウッド映画人のクルマに対するリテラシーの高さには感服させられる思いだ。

AMT 1/25 1969 フォード トリノ コブラ ファストバック

いったいどんな理由で付けられたのか? 今回は、国内外の地名がそのままモデル名やグレード名になっているクルマ、16車種をピックアップ。週替わりで紹介します。

映画に登場するグラントリノは、初代トリノから数えると3代目にあたるモデルで、1972~1976年にかけて生産された。しかし、その頂点は規制前の1972年モデル(1971年秋に発表)で、1973年モデルでフェイスリフトを敢行してフロントに5マイルバンパーを装着(リアバンパーへの装着は1974年から)し、オプションのシリーズ最強の429cu-inコブラジェットもラインナップから落とされた。スタイリングも楕円形のグリルを持つ特徴的なフロントマスクはのっぺりとした平凡なものに置き換えられて精悍さを失い、どこにでもある平凡な大衆車に堕してしまう。

Auto Cult/オートカルト フォード トリノ キングコブラ 1970 オレンジ

かつて存在した、フォードのインターミディエート(コンパクトとフルサイズの中間サイズ)のモデル。トリノの名はフィアットの本拠地であるイタリアのモータウンに由来するが、だからといってイタリアンデザインが導入されているわけではない。その名が最初に冠されたのは1968年で、シボレー・シェヴェルなどと市場を争っていた、フォード・フェアレーンの上級車種として登場した。

前後のオーバーハングに重量物をぶら下げ、パワーダウンして魅力を失ったマッスルカーのトドメを指したのが、1973年秋からの第一次石油危機だった。これにより消費者のマインドは一気に経済志向になり、ガスガズラー(ガソリンがぶ飲み車)のマッスルカーは死命を制されることになったのである。


1/25 1969 フォード トリノ コブラ ファストバック

マッスルカーとは、比較的安価な中・小型車をベースに大排気量のV8エンジンを与えたハイパフォーマンスカーのことで、1964年のポンティアックGTOの登場によって花開いジャンルのクルマである。1960年代中頃から1970年代初頭にかけてブームとなったマッスルカーは、当時の若者を夢中にさせ、好調な売り上げからビッグ3を大いに潤した。

「コブラ フォード」の中古車 | 中古車なら【カーセンサーnet】

1970年にフルモデルチェンジされた2代目トリノは、フェアレーンに代わってインターミディエートの主力車種となる。中間サイズといっても全長5.2m超、全幅1.9m超のボディーは4ドアセダン、2ドア/4ドアハードトップ、2ドアファストバッククーペ、2ドアコンバーチブル、5ドアワゴンがそろい、エンジンは4.1リッター直6、4.9リッターV8、5.8リッターV8などのエンジンをラインナップ。トリノGT(写真)や最高出力360PS(SAEグロス)を発生する7リッターV8を積んだトリノ コブラといったハイパフォーマンス仕様も用意された。

フォード トリノ コブラ(乗用車)の中古品・新品・未使用品一覧

そして、この1972年型グラントリノはマッスルカーの終焉とともに、自動車に象徴されるアメリカの黄金期、古き良きアメリカの終わりを象徴するクルマでもある。

レベル 1/25 70 フォード・トリノ・コブラ | mk7さんの作品

見ていただきありがとうございます。レベルさんのフォード トリノ コブラです。なかなか良いキットだと思います。

フォードのインターメディエイト、トリノ・コブラは7,000cc!のエンジンを積む大きいクルマです。 ..

しかし、ウォルトの愛車としてこれ以上ピッタリと当て嵌まるクルマはない。マスタングやカマロでは若者向けのクルマということで存在感が軽すぎるし、豪華なラグジュアリークーペであるフォード・サンダーバードやマーキュリー・クーガーでは華がありすぎる。ポンティアックGTOやダッジ・ダートもウォルトのイメージからはほど遠い。その点で言えばグラントリノのチョイスは完璧だ。大衆車として普及した車種のクーペ版でありながら、心臓部にはオプションとして用意された400hpを叩き出す429cu-in(約7030cc)コブラジェットを搭載するところが、今なおアメリカの伝統的な価値観を捨てきれずにいるウォルトという男の性格を物語っているではないか。

【アメリカレベル】14534)1/25 70 フォードトリノコブラ

日本車に例えるなら、同じメカニズムを搭載しながらもスポーツセダンに仕立てたスカイラインに対するハイオーナーカーのローレルの関係と言ったところか。エンジンはマスタングと共通のものが用意されていたが、熱い走りを求める当時の走り屋たちは大きく重いグラントリノを積極的に選ぶことはなかっただろう。

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JOHNNY LIGHTNING 1/64 1971 フォード トリノ コブラ グラバーブルー/ブラック【JLSP287A】ミニカー 返品種別B

1969 フォード トリノ コブラ ファストバック (プラモデル)

小さく軽いボディにハイパワーなエンジン。走りやパフォーマンスを重視するなら洋の東西を問わずこれが鉄則となる。ところが、先ほど挙げたクルマがコンパクト(日本の感覚で言えばそれでも充分大きいが……)なポニーカーであるのに対し、グラントリノはシリーズに4ドアHTやステーションワゴン、クーペユーテリティ(姉妹車のランチェロ)を持つインターミディーエイト(中型大衆車)の1つのバリエーションに過ぎなかった。

14534 1/25 70 フォードトリノコブラ [組立式プラスチックモデル]

商品解説■70年代を代表するアメリカンマッスルカー『フォードトリノコブラ』を詳細に再現!
シェーカーフード付ボンネット
429エンジン仕様
リアウィンドウルーバー付属
パーツ数:約120点

【商品詳細】
スケール:1/25

1/25 70 フォード トリノ コブラ【14534】 | アメリカレベル

映画のタイトルにもなっているグラントリノだが、じつは映画公開前までは熱心なマッスルカーファン以外からは半ば忘れられた存在であった。人気で言えば同じフォードのマスタングが圧倒していたし、シボレー・カマロやポンティアック・ファイアーバード、ダッジ・チャレンジャーやプリマス・バラクーダなどと比べてもいささか影が薄い。それというのもグラントリノが純粋なスポーツモデルとして製作されたクルマではなかったからだ。

Ford Torino cobra フォード トリノコブラ ミニカー 1/64のサムネイル

ウォルトとタオ。普通に考えれば交わることなど考えられないこのふたりを結びつけたのが、フォンに強要されてタオが盗もうとして失敗した1972年型フォード・グラントリノ・スポーツだった。

1/25 1969 フォード トリノ コブラ ファストバック ..

ボディバリエーションはトリノに限定して述べると、4ドアのセダンとハードトップ、2ドアのセダンとハードトップにコンバーチブル、そしてステーションワゴン(4ドア)という布陣。このうち2ドア・ハードトップは2種類あり、割りと直線的なウェストラインを持つ通常のハードトップと、なだらかなルーフラインに小さめのサイドウィンドウを特徴とするファストバック(”スポーツルーフ”)に分かれていた。シリーズ全体は下からファルコン、フェアレーン500となり、その上にトリノ/トリノ・ブロアム、トリノGT、トリノ・コブラという具合に構成されている。

トリノ(フォード)の中古車 | 中古車なら【カーセンサーnet】

そして、隣家に引っ越してきたモン族のタオ一家。彼らモン族はベトナムやラオス、中国南西部に住む少数民族であったが、ベトナムやラオスでは文化や民族の違いによって迫害を受けていたこともあり、ベトナム戦争中はアメリカに協力し、CIAの特殊部隊や米陸軍特殊部隊グリーンベレーの現地雇用兵として参戦した。だが、アメリカが敗北すると現地に取り残された彼らは共産政権からのますますの圧政に耐えきれなくなって国を捨てて難民となった。過去の経緯からアメリカ政府は彼らを受け入れたものの、人種差別が根強く残るアメリカ社会になかなか溶け込めず、タオのように職にもつけずに底辺の生活に身を置くか、あるいはフォン(スパイダー)のようにギャングを組織して犯罪に奔るしか彼らには選択肢がなかったのだ。アメリカの負の歴史の犠牲者でもある彼らだが、アジア系すべてに人種的な偏見を持つウォルトは、物語の序盤、彼らに対して差別的な言動を隠そうともしなかった。

ホビー 1/25 1969 フォード トリノ コブラ ファストバック 【AMT1217】 (プラモデル)

商品番号:HASEGAWA14534
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