【海外論文】再発・難治性MM、 イベルドミド+デキサメタゾン併用療法で


自家移植を寛解導入療法後早期に実施すべきか,再発時に実施すべきかを無作為で比較検討した試験がフランスから報告されている。本試験ではOS には差はみられないが,早期に実施することで無イベント生存期間(EFS)(39 カ月 vs 13 カ月)およびTWiSTT(Time without symptoms,treatment,and treatment toxicity:無治療かつ副作用なく無症状の期間)(27.8 カ月 vs22.3 カ月)が延長することが示されている。一方,自家移植と通常量化学療法とのランダム化比較試験であるUS S9321 試験において両群間でOS に差はみられなかったが,これは化学療法群でも再発時に多くが自家移植を受けたことによると考えられ,このことは再発時の移植も有用であることを示している。自家移植と通常量化学療法とのランダム化比較試験のメタアナリシスでも同様のことが指摘されている。しかし,早期に移植を受けない場合は長期間化学療法が継続されることになり,その結果,臓器障害や長期のアルキル化剤曝露による二次性骨髄異形成症候群のリスクを高めることになる。したがって,OS に有意差がなくとも早期に自家移植を実施することが推奨される。近年,ボルテゾミブやレナリドミドなどの新規薬剤を用いた寛解導入により奏効割合の大幅な上昇がみられ,自家移植の実施時期についてはup-front で実施する群と新規薬剤による地固め・維持療法を実施し再発時に自家移植を行う群との新たな第Ⅲ相試験が進行中である。


[PDF] 対象疾患 No レジメン 多発性骨髄腫(MM) MM-13

以上より,再発・難治性骨髄腫に対するBOR(+DEX)療法,LEN+DEX 療法,POM+DEX 療法は推奨される。

BOR においてはBOR+PLD 併用療法とBOR 単剤との第Ⅲ相比較試験が行われ,BOR+PLD群における無増悪期間(TTP)の有意な延長(中央値で9.3 カ月vs 6.5 カ月,p=0.000004)と全生存期間(OS)の延長(15 カ月の生存割合で76% vs 65%,p=0.03)が認められたが,同時にGrade 3 以上の有害事象の増加(80% vs 64%)も示された。なお,本邦では骨髄腫に対するPLD の保険適用はない。BOR+CPA+DEX 併用療法では,CPA 50 mg/day(連日)の併用における全奏効割合(CR+PR+MR)は90%で,OS の中央値は22 カ月と良好な成績であった。CPA 500 mg/day(days 1,8,15)の併用療法の後方視的解析では,全奏効割合(CR+PR)は75%に達し,BOR 単剤の27%,BOR+DEX の47%に対し優れていた。BOR+DEX 療法とPAN との併用効果の検討では,BOR+DEX+PAN 療法とBOR+DEX+ プラセボ療法との第Ⅲ相比較試験が行われた(PANORAMA 1)。CR およびnear CR の奏効割合はPAN 群の方が有意に優れていたが(27.6% vs 15.7%,p=0.00006),PR 以上の全奏効割合では有意差はなかった(60.7% vs 54.6%,p=0.09)。無増悪生存期間(PFS)はPAN 群において有意な延長を認めたが(中央値11.99 カ月vs 8.08 カ月,p<0.0001),OS は有意差を認めず(中央値33.64 カ月vs 30.39 カ月,p=0.26),追跡調査の最終報告でもOS における有意差はなかった(中央値40.3 カ月vs 35.8カ月,p=0.54)。Grade 3 以上の有害事象はPAN 群に多い傾向であった(血小板減少67% vs 31%,下痢26% vs 8%)。

※外国第Ⅲ相臨床試験(MM-003試験)デキサメタゾン併用投与での成績

POM についてはBOR やLEN を含む2 レジメン以上の治療歴を有する治療抵抗性骨髄腫を対象とし,POM+ 少量DEX 併用療法と大量DEX 療法との比較試験が行われた(MM-003 試験)。POM+ 少量DEX 併用療法は,PR 以上の全奏効割合(31% vs 10%,p<0.0001),PFS(中央値4.0 カ月vs 1.9 カ月,p<0.0001),OS(中央値12.7 カ月vs 8.1 カ月,p=0.0285)において大量DEX 療法よりも有意に優れていた。

若年者症候性骨髄腫患者に対して寛解導入後早期に自家造血幹細胞移植を行うことは再発時に移植を行うよりも勧められるか

再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした第III相二重盲検比較試験(MM-010試験 ..

LEN についてはLEN+大量DEX 併用療法とプラセボ+大量DEX 療法との比較がなされた(MM-009 試験,MM-010 試験)。2 つの試験の成績はほぼ同等で,全奏効割合やPFS,全生存期間(OS)においてLEN+大量DEX 併用療法が有意に優れていた, 。その後の追跡調査の結果においても,LEN 群は全奏効割合(60.6% vs 21.9%,p<0.001),完全奏効割合(15.0% vs 2.0%,p<0.001),PFS(中央値13.4 カ月vs 4.6 カ月,p<0.001),奏効期間(中央値15.8 カ月vs 7.0 カ月,p<0.001),OS(中央値38.0 カ月vs 31.6 カ月,p=0.045)において有意に優れていた。

以上より,再発・難治性骨髄腫に対するBOR+CPM+DEX 療法やBOR+PAN+DEX 療法は選択肢となるが,併用による毒性の増強を認める一方でOS における延長効果は未確定であることから,現時点ではリスクとベネフィットを考慮し選択すべきである。

ビンクリスチン、ドキソルビシン及びデキサメタゾン(骨髄腫VAD療法)

再発・難治性多発性骨髄腫の治療においては,プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬などの新規薬剤が導入され,治療成績の向上が報告されている。これまでに大量デキサメタゾン(DEX)療法との第Ⅲ相比較試験としては,ボルテゾミブ(BOR)単剤療法,レナリドミド(LEN)+大量DEX 併用療法,ポマリドミド(POM)+ 少量DEX 併用療法が行われており,それぞれの有用性が示された。

初発症候性骨髄腫患者に対するデキサメタゾン(DEX)投与量の比較は,レナリドミド(LEN)に大量DEX 療法と少量療法を併用したECOG E4A03 試験で行われた。LEN は25 mg を21 日間経口投与し,1 週間休薬した。大量DEX 療法では,従来通り40 mg を第1〜4 日,第9〜12 日,第17〜20 日に投与し,少量療法では,40 mg を第1,8,15,22 日に投与した。そこで,1 カ月のDEX 総投与量は1/3 となる。1 年の中間解析時点で,少量療法の生存割合は96%で,大量療法群の87%に比して有意に良好であった。特に,65 歳以上の高齢者では,少量療法の94%は,大量療法の83%に比し有意に良好であった。これは,大量療法群では感染症を中心とした有害事象による死亡が多かったことによる。また,移植非適応例に対するMP 療法(MEL, PSL)とTD 療法(THAL,DEX)のランダム化比較試験の結果が報告されている。MP 療法では,MEL 0.25 mg/kg,PSL 2 mg/kg の4 日間投与を28〜42 日サイクルで投与した。TD 療法では,THAL 200 mg 連日,DEX 40 mg の第1〜4 日,15〜18 日投与を28 日サイクルで投与した。TD 療法の全奏効割合は,MP 療法に比し有意に高かったが(68% vs 50%),無増悪生存期間(PFS)は同等で,全生存期間(OS)は有意に短かった(41.5 カ月vs 49.4 カ月)。これは有害事象がTD 群で有意に多く,特に75 歳以上の高齢者で発現頻度が高かったためである。以上より,高齢多発性骨髄腫患者には少量DEX 療法が推奨される。


再発・難治性MMに対するイキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン〜第II相試験最終分析.

若年者症候性骨髄腫患者に対する自家造血幹細胞移植併用大量メルファラン療法は通常量化学療法と比べて生存期間を延長させるか

[PDF] 多発性骨髄腫患者に対する低用量デキサメタゾン併用療法時における

BLd 療法(BOR, LEN, DEX)をLd 療法と比較したSWOG S0777 試験では,BLd 療法においてPFS およびOS が有意に勝っていたが,Grade 3 以上の有害事象(特に末梢神経障害や神経性疼痛)や治療中止例が多く高齢者への適応には注意を要する。そこで,減量した治療法BLd lite の試験が進められている。O’Donnell らは53 例を対象とした第Ⅱ相試験で全奏効割合91.4%,PFS 中央値35.1 月,50%生存期間未達であり,有害事象も少なく高齢者には有用と報告しており,今後選択肢の一つとなると考えられる。

再発・再燃骨髄腫患者を対象に,TTPを主要評価項目として当時の標準治療である大量デキサメタゾン ..

自家造血幹細胞移植適応症例における初期治療として,ボルテゾミブ(BOR)やレナリドミド(LEN)などの新規薬剤を用いた寛解導入療法が推奨される。BD 療法(BOR, DEX)やBAD 療法(BOR, DXR, DEX) はVAD 療法(VCR, DXR, DEX) との比較で,BTD 療法(BOR, THAL,DEX) はTD 療法(THAL, DEX) との比較で寛解導入および自家移植後の最良部分奏効(VGPR)以上の奏効割合が有意に優れていた。BTD 療法はTD 療法に比べgrade 3 以上の末梢神経障害(peripheral neuropathy:PN)が有意に多いが,BOR とTHAL の用量を減量したbtD はBD との比較で移植後のVGPR 以上の奏効割合は有意に高く,一方grade 2 以上のPN は有意に少なかった。LEN についてはLD 療法(LEN, DEX)がDEX 大量より有意に優れ,さらにLEN と高用量DEX(LD)とLEN と低用量DEX(Ld)の比較で,4 コース後のPR 以上の奏効割合はLD が有意に優れていたが,1 年OS はLd が有意に優れていた。THAL については,TAD 療法(THAL, DXR, DEX)とVAD 療法との比較で自家移植後のVGPR 以上の奏効割合はTAD 療法が優れていたが,CTD 療法(CPA, THAL, DEX)とCVAD 療法(CPA, VCR, DXR,DEX)の比較では自家移植後のVGPR 以上の奏効割合に有意差はなかった。その他,CBD 療法(CPA, BOR, DEX)やBLD 療法(BOR, LEN, DEX)の報告もみられるが,第Ⅲ相試験の報告はない。以上より,BD,BAD,BT(bt)D,Ld 療法が推奨される。なお,本邦では新規薬剤の初発例に対する保険適用はBOR に限られる。

2022年5月、腰が痛くなり総合病院の血液内科で精密検査を受けたところ、多発性骨髄腫(MM)と診断されました。 ..

65 歳未満の初発例を対象としたフランスのランダム化試験では,VAD 療法(VCR, DXR, DEX)による寛解導入後メルファラン(MEL)200 mg/m2 (MEL200)群とMEL 140 mg/m2+全身照射(8 Gy)群に割り付けられている。結果として,完全奏効(CR)割合は両群で有意差はみられなかった(35% vs 29%)がCR+最良部分奏効(VGPR)割合はMEL200 群で良好な結果であった(55% vs 43%,p=0.06)。各群20.5 カ月と20 カ月の観察期間で,45 カ月後の全生存割合(OS)は65.8%と45.5%でMEL200 群が優位に優れていた(p=0.05)。一方,無イベント生存期間(EFS)はそれぞれ20.5 カ月と20 カ月で有意差はみられなかった。好中球減少,血小板減少,入院期間,静脈内抗生剤投与期間はいずれもMEL200 群で短く(p<0.001),血小板および赤血球輸血はいずれもMEL200 群で少なかった(p<0.001)。口内炎(grade 3~4)もMEL200 群で有意に少なかった(30% vs 51%,p<0.001)。以上より,MEL 200 mg/m2 が移植前処置として推奨される。

重症(Ccr≦30ml/min:透析必要):本 剤 5mgを 1 日1 回投与(透析日は透析後に投与)

移植非適応の初発症候性骨髄腫患者に対する寛解導入療法は,従来MP 療法(MEL, PSL)が標準療法であった。しかし,サリドマイド(THAL),ボルテゾミブ(BOR),レナリドミド(LEN),ダラツムマブ(DARA)などの新規薬剤が開発され,MP 療法やデキサメタゾン(DEX)に併用する臨床研究が行われた。

上記に示している「デキサメタゾン」は副腎皮質ステロイドの飲み薬を指します。 ..

若年者症候性骨髄腫患者における移植を前提とした寛解導入療法では何が勧められるか

デキサメタゾン併用療法、無増悪生存期間、客観的奏効率を有意に改善する ..

若年者骨髄腫において,タンデム自家/同種(ミニ)移植とタンデム自家/自家移植を比較した試験が5 つ行われている。このうち,イタリアの試験とEuropean Group for Blood and Marrow Transplantation(EMBT)の試験4)でタンデム自家/同種(ミニ)移植の有用性が報告されているが,IFM の試験およびもっとも大規模な米国からの報告, では両群間で有意差がみられていない。対象や同種移植における前処置が試験により異なるが,タンデム自家/同種(ミニ)移植が無イベント生存期間(EFS),全生存期間(OS)ともに優れていたとするイタリアからの報告では同種移植前処置がTBI 2 Gy となっている, 。しかし,同様の前処置で行われた米国からの大規模試験の報告では標準リスク,高リスク群いずれにおいてもタンデム自家/自家移植と同等の成績であった。EBMT からの報告では移植前処置はフルダラビン(FLU)+TBI 2 Gy であり,自家移植群はシングルあるいはタンデムであったが,PFS,OS ともにタンデム自家/同種(ミニ)移植が優れていた。一方,PTHEMA 試験では自家移植後near CR に到達しなかった症例をHLA 一致同胞の有無でランダム化しているが,同種移植群で高いCR 率とPFS の延長がみられたもののOS には有意差がなかった。以上より,タンデム自家/同種(ミニ)移植がタンデム自家/自家移植よりOS において優れているとは言えない。

Wintrobe MM, Wintrobes Clinical Hemtaology: Lee et al

無症候性骨髄腫患者を対象としたゾレドロン酸4 mg の月1 回で1 年間の投与群と無治療群のランダム化第Ⅲ相比較試験(n=163)と,パミドロネート60~90 mg の月1 回で1 年間の投与群と無治療群のランダム化第Ⅲ相比較試験(n=177)が実施されている。1 年間のビスホスホネート製剤の投与は実施可能なレジメンであるが,いずれの試験でも主要評価項目である臓器障害の出現で定義される症候性骨髄腫への進展までの期間(TTP)や全生存期間(OS)には有意差はなかった。症候性骨髄腫へ移行時の貧血,腎障害や髄外腫瘤形成などの発現頻度には両群間での差は認められなかったが,骨関連事象(skeletal-related events:SRE)の発現率はビスホスホネート投与群で有意に減少することが示されている(ゾレドロン酸55.5% vs 78.8%:p=0.041,パミドロネート39.2% vs 72.7%:p=0.009)。現在イタリアグループにより,無症候性骨髄腫患者に対する2 年間のゾレドロン酸投与と無治療群のランダム化比較試験が進行中である。

患者向け資材 | MM | Hemapedia : 血液内科領域の情報メディアサイト

再発難治例を対象としBOR+DEX 療法とCFZ(20/56)+DEX 療法を直接比較したENDEAVOR 試験では,無増悪生存期間(PFS)中央値においてCFZ+DEX 群は18.7 カ月,BOR+DEX 群は9.4 カ月であり,CFZ+DEX 群が有意に上回った(p<0.0001)。その後の追跡調査では,CFZ+DEX 群の全生存期間(OS)における優位性も示された(中央値47.6 カ月vs 40.0 カ月,p=0.010)。BOR 投与歴を有する症例は両群ともに54%であり,サブ解析ではBOR 投与歴の有無に関わらず,CFZ+DEX 群のOS 延長効果における優位性が示された。血液学的毒性を除くGrade 3 以上の有害事象として,CFZ+DEX 群では血圧上昇(15%)と呼吸困難(6%)が多く,BOR+DEX 群では下痢(9%)と末梢神経障害(6%)が多い傾向であった。サブ解析において高リスク染色体異常を有する例の全奏効割合(ORR)は,CFZ+DEX 群は72.2 %,BOR+DEX 群は58.4%,PFS 中央値はそれぞれ8.8 カ月と6.0 カ月であり,高リスク群においてもCFZ+DEX 群の優位性が示された。以上より,BOR 投与後の再発例や高リスクの再発例に対し,CFZ+DEX 療法は推奨される。その後,前治療歴が2〜3 回で直近の治療に難治性であった再発難治患者を対象に,週2 回投与のCFZ(20/27)+DEX 療法と週1 回で高用量投与のCFZ(20/70)weekly+DEX 療法を比較したARROW 試験が実施された。46.3% がBOR 抵抗性,77.5% がLEN 抵抗性の患者に対してCFZ(20/70)weekly+DEX 療法は,PFS 中央値において11.2 カ月と,同様の患者群を対象としたCFZ(20/27)+DEX 療法によるPFS 中央値7.6 カ月に比して有意に延長効果を示した(p<0.0029)。

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)

無症候性骨髄腫に対する治療介入は,現時点では症候性骨髄腫への進展高リスク群を対象とした臨床試験の範疇での実施に限定されるべきである。